チーム守中コラム〜道徳〜モラルジレンマ

画像1
 一昨年度より中学校で、「特別の教科」となった道徳。道徳の授業は、いろいろな資料に触れ、考えを巡らせ、様々な価値観に触れることができる大切な時間です。人は、それぞれの置かれた場所で、それぞれが感じたことを土台に生活しています。ですから、人の考え方は様々で、様々な考えを知ること、あるいは自分の考えを整理し、深く考えることが大切になります。

 道徳で時折取り上げられるものに、モラルジレンマというものがあります。モラルジレンマとは、ある究極の二択を迫られた時、そもそもその二つの選択肢はどちらか一方を選んだり一方を捨てたりすることができないものなので、どちらかを選ぶということがそもそも間違っているというシチュエーションのもとで心に起こる葛藤を指します。少し難しいですが、例を挙げて説明します。

(例1)ハインツのジレンマという有名な話を紹介します。ヨーロッパで一人の婦人が大変重い病気のために死にかけていました。その病気は特殊な病気でしたが、彼女が助かるかもしれない薬を町内の薬屋が最近発見しました。その薬の製造費は高かったのですが、薬屋はその薬を製造するのに要した費用の10倍の値段とつけていました。薬屋は依頼した製造者に200ドル払い、わずか一服分の薬に2000ドルの値段をつけたのです。病気の婦人の夫であるハインツはあらゆる知人にお金を借りに行きましたが、薬の値の半分の1000ドルしかお金を集めることができませんでした。彼は薬屋に妻が死にかけていることを話し、薬をもっと安くしてくれるか、でなければ後払いにしてくれるよう頼みました。しかし薬屋は「だめだ、私がその薬を発見したんだし、それで金儲けをするつもりだからね」と言うのです。ハインツは思いつめ、妻のために薬を盗みに薬局に押し入りました。

(例2)A男は清掃の時間、真面目に清掃をしていました。ところがB男は遊んでばかり。A男が何度注意したり丁寧に話してもB男は何も聞かず遊んでいました。A男は「ちゃんとやれよ」と言ってB男が遊んでいたほうきを強く取り上げたところ、その勢いでB男が転倒し、怪我をしてしまいました。

 さて、この例1、2では、何が正しくて、何が悪いのでしょうか。それを考えていくのがモラルジレンマの道徳です。モラルジレンマは、道徳には適さないと唱える学者の方もいらっしゃいますが、モラルジレンマの狙いは、多様な価値観に触れることなのです。価値観というのは、その人その人の生き方でもあります。いろいろな経験を自分の価値観に結び付けることが大切です。生徒の皆さんには、是非、価値観や生き方に結び付くような経験や出会いをしてほしいと思います。
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31